生活工房にて昭和の8ミリフィルムを語る「エトセトラの時間 見えるものと見えないものを語る会」(2023.9.23)

東京都世田谷区にある生活工房では、昭和30~50年代に普及した8ミリフィルムのデジタル・アーカイブとして、全84巻の映像をウェブサイト「世田谷クロニクル」で公開しています。ここに収録された映像には、市井の人々による日々の出来事や昭和の風景が記録されています。

「視覚障害者とつくる美術鑑賞ワークショップ」では、この「世田谷クロニクル」に収録された映像を見て語るプログラム「エトセトラの時間 見えるものと見えないものを語る会」を2022年よりオンラインで開催してきました。

第四回目となる会が2023年9月23日(土)に行われ、視覚障害者を含む5名の方が参加しました。
今回囲んだ映像は「経堂家族、雪景色、東京の町etc」。都内のフリーマーケットに出されていたというフィルムには、昭和29年の東京の町の雪景色などが映っています。大雪で景色の一変した路地ではしゃぐ大人と子ども、雪が溶けかかった銀座の交差点を通り過ぎる車や人、路面電車。新宿駅やどこかの渋滞の様子が映し出されたかと思えば、今度は関係性のよく分からない老年の女性が歩いていく姿をカメラが捉えます。

たしかに誰かが何かを意図してカメラを向けたはずなのですが、今この映像を見る私たちは、たまたまカメラに映り込んでしまったよくわからない断片にもつい目を向けてしまいます。参加者の皆さんからは、「雪をすくってカルピスをかけて食べた」というような個人的な経験のディテールや、雪の多い地方での雪かきの感触、親の世代が使っていた「省線」ということばの記憶、重ね撮りしたカセットテープに集まってしまった音の断片を思い起こさせるといった話も出て、フィルムに映り込んだ映像の断片によって、個人の経験や記憶が引き出されたようなお話がたくさん聞けました。さらに、「撮り手は映像の中に写っていたのだろうか」という疑問をきっかけに、答えのないそれぞれの想像が立ち上げられました。

【鑑賞した映像】

「経堂家族、雪景色、東京の町etc」
撮影時期:昭和29年1-3月
撮影場所:皇居、銀座(中央区)、日比谷(千代田区)、赤坂(港区)など

https://ana-chro.setagaya-ldc.net/projection-room/?film=12

   • 大雪に見舞われた東京の数日間の記録。雪降る前の日常。大雪をスコップでかく大人と、雪だるまや木製のスキーで遊ぶ子どもの姿。東京駅、銀座、除雪作業を行う車両、経堂駅前の靴磨きの風景など。都内のフリーマッケットで販売されていたフィルムをたまたま購入した提供者の持ち込みにより、本映像はデジタル化に至った。(世田谷クロニクル解説文より)

主催|公益財団法人せたがや文化財団 生活工房
企画制作|remo[NPO法人記録と表現とメディアのための組織]、視覚障害者とつくる美術鑑賞ワークショップ
後援|世田谷区、世田谷区教育委員会