東京都写真美術館「いま、ここにいる―平成をスクロールする 春期」展にてワークショップ(2017.5)
2017年5月28日(日)、6月4日(日)に東京都写真美術館にて視覚障害者とつくる美術鑑賞ワークショップを開催しました。2日間で17名の方にご参加いただきました。 今回のワークショップでは東京都写真美術館で開催している「いま、ここにいる―平成をスクロールする 春期」展の中から松江泰治、安村崇、佐内正史の3作家の組写真を鑑賞しました。
この日みた写真をそのまま言葉にすれば「みかん」「お風呂のかき混ぜ棒」(安村崇の作品)「田園や墓地の風景」(松江泰治の作品)「観葉植物」「ガードレール」「吉野家の看板」(佐内正史の作品)などなど私たちが知っている日常の延長にあるものばかり。あまりにもありふれていて言葉に書き留めてみても面白くはありません。 しかし、写真を見ながら語るうちに参加者の側には様々な反応が現れます。例えば「みかん」や「お風呂のかき混ぜ棒」の微妙な嘘くささに思わず笑ってしまったり、鳥の視点から撮ったかのような「田園や墓地の風景」に驚きを感じたり、「観葉植物」「ガードレール」といったありふれたイメージの連なりに親しみや寂しさといったちょっとした物語を読み取ったり。そしてそのことが言葉で共有されていきました。 写真から生まれた笑い、驚き、物語、とは目の前にある写真と自分(たち)の日常の「距離」なのだと思います。似ているけど違う、違うけど似ている点を語ることはつまり写真と日常との結びつきを語ることなのでしょう。
写真を見るという行為は写っている視覚情報を受け取る受動的な行為だけではなく、写真によって私(たち)の日常が照らされ、「見ているつもりで見えていない日常」を発見するという写真との相互行為なのかもしれません。 今回のワークショップでは報道写真、広告写真、プライベートな写真などとは違う、写真を見るもう一つのおもしろさを発見できたように思います。
【鑑賞した作品】
《JP-01 55》松江泰治
《JP-05 09》松江泰治
《日常らしさ》より5点 安村崇
《生きている》より15点 佐内正史
photo:中島佑輔