ビッグ・アイ アートプロジェクト公募展入選作品展にてワークショップ (2017.5)
2017年5月3日(水・祝)にビッグ・アイ アートプロジェクト公募展入選作品展(障害の有る無しに関わらず応募できる公募展)で「視覚障害者とつくる美術鑑賞ワークショップ」を開催し、12名の方にご参加いただきました。
参加者の方々と話が特に盛り上がったのは、《わかりません》(谷口能崇)という作品。既製品の家庭用インクジェットプリンターに赤青緑黄色の丸いシールが無造作に貼ってある作品です。参加者からは、「いたずらのように思える。私だったら怒っちゃうな」「プリンタの中にあるインクが滲み出てきたよう」「点をずっと見ていれば何かが見えてきそうな気がするが、何も見えてこない(笑)」「プリンタが新種のウイルスに感染した感じ」、と様々な見立てが出てきました。
鑑賞後の振り返りで参加者の一人から「正直あの作品(《わかりません》)を見て何を言えばいいのか、どんな感想を持てばいいのか、わからなかった」という率直な言葉が語られました。それをきっかけに「言われてみると、確かに意味を見出そうと頑張っている気がした」「(考えるとっかかりがなくて)見ていて疲れる作品だった」という感想も。《わかりません》は確実に作者が刻んだ一つの痕跡でした。そして、「これは作品なのだろうか?」「作品とは何だろうか?」と考えさせられるものでもありました。
今回のワークショップでは、誰かの日常にある行為を「作品」としてみることへの戸惑いが表れていたと思います。このような作品に、私たちはどのように向き合いとらえていけばいいのか、まだ答えは出ていません。
【鑑賞した作品】
《SINGING WITH HER SOUL》ゲイタン・カミングス
《メロンの皮》高橋信之
《わかりません》谷口能崇
《いろいろ》野村よしお
《ひととさかながおよいでる。》吉谷倫
写真:中島佑輔