東京都美術館「キュッパのびじゅつかん」展にてワークショップ(2015.9)

2015年9月12日(土)に東京都美術館「キュッパのびじゅつかん」展(台東区)にて24名のみなさんと視覚障害者とつくる美術鑑賞ワークショップを開催しました。 この展覧会は、ノルウェーの絵本「キュッパのはくぶつかん」(福音館書店)の世界が舞台となっています。絵本の主人公キュッパ(モノ集めが好きな丸太の男の子)のようにさまざまな物を「みつめて、あつめて、しらべて、ならべ」ることが出来る体験型の展覧会です。

展示室に散らばる1000種類以上のモノの中から自分の標本箱をつくるコーナーでは、目の見える参加者、見えない参加者、大人とお子さんも入り混じったチームに分かれ一つのテーマの箱をつくりました。チームのカラーは見事にバラバラで、収集の楽しさに没頭するチーム、協調するチーム、妄想するチーム、などなど。ガラクタが並んだような箱の中にユニークな世界の縮図ができあがりました。

その後、つくった本人達が箱に込めたテーマがはたから見る人にはまるで分からず、テーマを当てようとするうちにみんなの想像がふくらみ、同じものを見ていながらいろいろな意味があらわれる展開に。分からないという状況から、世界(箱)の見え方が次々とあらわれる様子がとてもおもしろかったです。

今回のワークショップには目の見えない人だけでなく耳の聞こえない人も参加していたのでチームの会話は言葉(話し言葉、手話、筆談)だけでなく、身体感覚を使って行いました。例えばいろんな大きさの石やガラクタのような物に触れて、言葉ではフォローできないヒラメキや価値観を共有する場面もありました。「言葉だけでなく共通の感覚で意思疎通できたことがとても嬉しかった」という参加者の声が印象的でした。

また初参加の方からは「見たこと感じたことを言葉にするのが難しかった」という感想もありました。普段と違う言葉使いに切りかえるのは難しいことかもしれません。ワークショップではその切りかわる体験を大事にしたいと思っています。言葉にできることだけを語るのではなく、言葉にできないこと、分からないという状況そのものを、想像し語ることで新しい楽しみ方や関係性が生まれるのではと思います。

※この美術鑑賞ワークショップはアーツカウンシル東京(公益財団法人東京都歴史文化財団)の平成27年度 第Ⅰ期 東京芸術文化創造発信助成を受けて実施しています。

photo:中島佑輔