九州国立博物館「バックヤードツアー」&「ポンペイ展鑑賞ツアー」(2022.11.10 )
2022年11月10日・11日の2日間にわたり、九州国立博物館(福岡県太宰府市)にて「視覚障害者とつくる博物館まっすぐ&ぶらぶら対話ツアー」と題し、2つの対面ツアーを実施しました。第1回(一日目)は博物館の裏側をめぐるバックヤードツアー、第2回(2日目)は「ポンペイ展」の展示室を対話しながらめぐるツアーという、博物館という場での新しい試みでした。
第1回のバックヤードツアーには、目の見える人、見えない人、博物館職員など、さまざまな立場の人合計6人が参加しました。
目の見えるスタッフと見えないスタッフがメインナビゲーターを務め、普段バックヤードツアーをされている職員さんと博物館の裏側をめぐりながら対話が進んでいきました。
このバックヤードツアー、いつも博物館のイベントとして開催しているツアーなのですが、対話を意識しながらめぐるのは初の試み。収蔵庫の中を小窓から覗いたり、修復に使用する薄い和紙を漉く様子ようすを見学したり、大型エレベーターに乗ったりと、魅力が満載なツアーですが、果たしてどんな対話が生まれるのか、始まる前は少しドキドキでした。
しかし、実際始まってみたら時間が足りないくらい「博物館のなか」をみなさんと探索できました。収蔵庫の棚に資料をもどす人や、修復室で働く人など、中で作業をしている人を見るのは面白いですが、対話をすることで、見過ごしてしまうよう様な詳細に目が向けられたり、たぶん〇〇をしているんじゃないかなぁ?と推測する場面も多くありました。
1つの場所に立ち止まって同じものをみながら違う視点を持ち寄り時間を過ごせることは対話の良さかなと思います。職員さんの裏話エピソードなどもあって、博物館に来る方と、博物館のなかの方と一緒に楽しめた時間でした。最後にはバックヤードから常設の展示空間へと入り、博物館での展示の背景が垣間見れた対話ツアーとなりました。
第2回目はポンペイ展展示室にて対話ツアーを行いました。
この特別展は東京、京都、宮城そして福岡と巡回してきた展示で、紀元後79年のヴェスヴィオ火山の大噴火により当時の生活がそのまま埋まってしまったイタリアの古代都市ポンペイで発掘された、美術品や生活用品の展示でした。1日目とは別の参加者、博物館職員、計6名が対話をしながら展示を見て回り、前日と同じく目の見えるスタッフと見えないスタッフがナビゲーターを務めました。博物館ならではの鑑賞の面白さのポイントってなんだろう?とスタッフ間でも事前に話し合い、当日は犠牲になった女性の石膏像、当時まさにその日に焼けたパンが炭化したもの、使っていた料理器具や工具、モザイク画などを鑑賞しました。
博物館ならではの鑑賞の面白さのポイントってなんだろう?と手さぐりでした。犠牲になった女性の石膏像、当時まさにその日に焼けたパンが炭化したもの、使っていた料理器具や工具、モザイク画などを鑑賞しました。
面白かったのは、展示についているキャプションについて対話をしたこと。題名はいつ誰がつけたものなのか?という話題が出たり、「玉子焼き器、あるいは丸パン焼き器」の ”あるいは” に着目したり、何気なくかいてある「79年」という数字が紀元後79年であることにあらためて驚いたり。すっと通り過ぎてしまうようなことに立ち止まって、そこにも潜んでいる面白さを発見できました。]
そして参加者さんの動きも印象的でした。しゃがんで裏がどうなっているか見ようとしたり、犠牲者の女性の石膏像と同じ格好をしてみて、どうしてこの格好になったのか、身長はいくつなのか、?という疑問を検証してみたり、身体や視点を動かしながら鑑賞出来たのも、みんなで見ているからならではでした。対話のなかでいくつも「確かに!どうだったんだろう?」という疑問がポッと出てきたのですが、学芸員さんの絶妙なタイミングでの解説により、とっても腑に落ちるかたちでいろいろ知ることも出来た対話ツアーとなりました。 (スタッフ森尾)
【鑑賞作品】
女性犠牲者の石膏像 79年/1875年 石膏
目玉焼き器、あるいは丸パン焼き器、1世紀、ブロンズ
アヒルのケーキ型 1世紀、ブロンズ
仔ブタ形の錘 1世紀、ブロンズ
炭化したパン、79年 食品
金槌付き手斧、鑿 1世紀 鉄
猛犬注意、1世紀、モザイク
葉綱と悲劇の仮面、前2世紀末、モザイク
主催 九州国立博物館