国立新美術館 「李禹煥」展にてワークショップ (2022.10.18)

17人の参加者が2チームにわかれ、別々の作品を同時に鑑賞しました。17名の参加者は見えない方、ろうの方、様々な見方を持った方が集まりました。各チームでは目の見えるスタッフと見えないスタッフがナビゲーターを務め、一方のチームでは手話通訳を介して対話が進みました。

今回鑑賞した展示は「もの派」を代表する美術家、李禹煥の大規模な回顧展です。彫刻の概念を変えたと言われる李禹煥ですが、彫刻といっても目の前に遭遇するのは、壁に掛けられた鉄板のシートや、大きな石が落とされてひび割れたガラス板。一瞬「これは何?」と戸惑ってしまうようなシンプルさに、まずは見えることからぽつぽつ言葉にしていくことから始まりました。だんだんと、響きを感じるという感覚や怖いなという感情、どうやって筆をひいたんだろう?という問いや、こんなことが起こったのでは?という推測など、見えないことに対話が展開していきました。印象的だったのは、展示という場は最初から最後までずっと静かで音は無く、作品も動いてはいないのだけれど、作品から感じる音の話や動きの話がよく出たことです。

彫刻のあとには絵画のセクションがあり、最後に彫刻と絵画が統合していくような構成の展示でしたが、一貫して「関係項」というキーワードがテーマとしてありました。ものとものは関係し合い意味を成しているけれども、それをみる私たちとのあいだでも関係が成り立っているということを意識させる展示空間に、まったくの見知らぬ人同士であった今回の鑑賞グループのなかで立ち現れた対話もまた、関係項だったのではないかと思わされるようなそんなワークショップでした。(スタッフ森尾)

 

【鑑賞作品】
Aチーム
1《現象と知覚B 改題 関係項》 1968 / 2022年 石、ガラス
2《線より》1977年
3《関係項―サイレンス》 2006 / 石:2014年、カンヴァス:2022年

Bチーム
1《構造 A 改題 関係項 》1969 / 2022年 鉄、綿
2《項》 1984年 石、鉄
3《対話》2009年  《対話》2009年  《対話》2010年

主催 国立新美術館