シネマ・チュプキ・タバタ 「音声ガイドでもっと映画をおもしろく」のリーフレット公開(2020.7)

東京・北区のユニバーサルシアター「シネマ・チュプキ・タバタ」(以下「チュプキ」)。このチュプキが昨年度実施した事業に、私たちは映画鑑賞ワークショップの企画運営として協力をしました。この事業の目的は「映画音声ガイド制作者の人材育成と鑑賞ツールとしての可能性を広げる研究」。詳しい事業内容をチュプキのホームページと記録リーフレット「音声ガイドでもっと映画をおもしろく」として公開しました。

この事業は、(1)音声ガイド制作者の養成、(2)制作した音声ガイドを用いたワークショップ、の二本柱からなっています。私たちが協力したのは、(2)のワークショップ部分です。  ワークショップのテーマは、「映画らしさってなんだろう」。前述の(1)で3作品分の音声ガイドが制作されたため、それぞれについてワークショップを行う予定でした。具体的には2019年9月「駅馬車」、同12月「三十四丁目の奇蹟」、2020年3月 「カサブランカ」です。ただし、「カサブランカ」については、新型コロナウイルス感染拡大防止のため、残念ながら中止することになりました。  ワークショップには、題材となった映画を鑑賞した方々が集まりました。私は全盲の視覚障害者なので、音声ガイドを便りに鑑賞したうえで参加しました。私と同じように鑑賞した視覚障害者、以前に鑑賞した経験のある晴眼者、今回のためにチュプキ で鑑賞してから参加した方など、鑑賞経験は様々です。

ワークショップでは参加者が印象に残ったシーンを繰り返し再生しながら、様々なことを語り合いました。音声ガイドは時間的な制約もあり、短い言葉で説明しないといけません。ですが、実際の映像には、音声ガイドでは語りきれない雑多な要素が映されています。たとえば、「駅馬車」編では、登場人物一人一人の身なりや表情に話が及びました。そこから登場人物の身分や価値観、そして公開当時の時代背景へと話が展開しました。一人で鑑賞しただけでは、ここまで映画を味わうことはできませんでした。また、「三十四丁目の奇蹟」編では、何気ない音声ガイドの言葉が気になりました。それは「時間の経った法廷」という言葉です。目の見える人がどのような映像から「時間の経った」ことを読み取っているのか、皆さんとお話しすることができました。ワークショップを通じて、映画や映像に対する気づきを得ることができましたし、見える方とそれを共有することもできました。  音声ガイドの普及により、全盲の私にも独力で映画のストーリーを追い、物語を楽しむことができるようになりました。そして、それに満足していました。けれど今回、映画の中には無限の可能性が詰まっていることを実感しました。映画について語り合 う場の面白さを発見するとともに、映画について語り合える仲間を作りたい、そう感じさせてくれたワークショップでした。

【記録冊子(PDF)はこちら】
音声ガイドで映画をもっとおもしろく

主催:シネマ・チュプキ・タバタ
協力:視覚障害者とつくる美術鑑賞ワークショップ
報告冊子編集:平塚千穂子 林建太
報告書イラスト/デザイン:進士遥 助成:公益財団法人東京都歴史文化財団 アーツカウンシル東京

参考資料:イベントチラシ