【リフレクション】分かり合えないことを肯定する〜2018年の写真美術館を振り返って〜(2019.1.19)

2018年度に東京都写真美術館で季節ごとに6回実施した視覚障害者とつくる美術鑑賞ワークショップをすべて終えることができました。 振り返ればこの一年のプログラムでは、ありのままに写真を見つめ、ありのままの経験を語ることは可能かという問いを繰り返していたような気がします。 「写真」とは目で見る鑑賞が一般的ですがこのワークショップの中では、集まった参加者の言葉によって新たな「写真をみる」という行為が見出されていくような体験でした。

言葉をキャッチボールしながら見知らぬ人と一緒に共通言語を探すような楽しさがある一方で、参加者の中に戸惑いが伝染し、躊躇し、会話がかわせなくなる場面もしばしばありました。 視覚障害者、晴眼者といった属性の元に立つ時、私たちは否応なくマイノリティ、マジョリティという属性によって隔てられている。正解を授ける人、教えを乞う人という役割に留まろうとするといつしか会話が止まってしまう。正確に、正直に、誠実に、あろうとすればするほど言葉がやせ細って少なくなっていく。ありのままに見つめ、語ることは一筋縄ではいかない難しさでした。

そうした難しさを無理やりに理解や共感に導くのではなく、分かり合えないことを肯定するためには1年間という長い時間が必要であったように思います。改めて豊かな経験をもたらしてくれた写真美術館と参加者の皆さん、そしてコレクション作品の数々に感謝を申し上げます。