川崎市市民ミュージアムにて収蔵品鑑賞ワークショップ(2016.3)

2016年3月13日(日)に川崎市市民ミュージアム(神奈川県川崎市)にて17名の参加者の皆さんと一緒に川崎市市民ミュージアムの収蔵品を鑑賞しました。

川崎市市民ミュージアムでは、「複製芸術」を収蔵するという特徴的な方針を掲げています。このワークショップでは、国内外の広告ポスターや版画、川崎にゆかりのある写真や絵画を鑑賞しました。なぜ広告のポスターが「芸術」になり得るのか、デザインと芸術の境界線はどこにあるのかなど市民ミュージアムの収蔵品や収蔵方針についてじっくり話をする時間となりました。
ワークショップ中、視覚障害の参加者から美術鑑賞の方法に対する要望が語られる場面がありました。その要望は「作品や作家についてある程度の事前知識がなければ晴眼者と対等に話すことはできないので教えて欲しい」というものでした。その投げかけを受けて学芸員の解説を交えながら、このワークショップにおける「美術鑑賞」とは何を指すのか、「対等」とはどういうことかを参加者同士で話し合うことになりました。

参加者の間にある「目の見える人」と「目の見えない人」という境界線をくっきりと意識しながらの話し合いになりました。これはとても大事な時間だったように感じます。

さらに鑑賞の時間が進むと今度は「見える/見えない」以外の境界線を意識することもありました。例えば80年代の企業広告のポスター作品に漂う時代の空気感を、世代を超えて共有することができませんでした。あるいは川崎の街を題材とした写真作品や立体作品では、どれだけ川崎という場所を知っているかによって作品の解釈に違いが表れました。
そこには、「見える/見えない」だけでなく、年代や性別、出身地や経験、美術への知識量など様々な境界線があったのだと思います。 そのようなバラバラな背景を持つ人同士が一つのものについて話すとき、その関係性は必ずしも対等ではないかもしれません。しかし、対等ではないと知るからこそ、それぞれが自分の立場から遠くへ想像を巡らせ語ることが可能なのだと思います。

【鑑賞した作品】

コレクション展 収蔵品ピックアップ(2016年1月23日-2016年4月3日)の中から

・企業(パルコやキッコーマン)や作家のポスター
・写真家村岡秀男の作品
・岩崎貴宏の「都市の表象」をめぐる作品など。

 

写真:中島佑輔