【本の紹介】「目の見えない人は世界をどう見ているのか」(著者伊藤亜紗 光文社新書)

「目の見えない人は世界をどう見ているのか」(著者伊藤亜紗 光文社新書)という本が出版されました。
著者の伊藤さんが目の見えない人たちとの対話の中で感じたこと考えたことを「空間」「感覚」「運動」「言葉」「ユーモア」5つのテーマに分けて論じています。

視覚障害者とつくる美術鑑賞ワークショップのメンバーもインタビューなどで協力しました。「本書は視覚障害者やその関係者六名に対して著者が行ったインタビュー、ともに行ったワークショップ、さらには日々の何気ないおしゃべりから、晴眼者である私なりにとらえた「世界の別の顔」の姿をまとめたものです。見えない世界しか知らない人にとっては逆に目で見た世界が「別の顔」になります。「そっちの見える世界はどうなっているの?」「えーっと、こっちはねえ…」そんな感じでお互いの世界を言葉にしていきました。」(本文より)

「障害者」「健常者」ということを語る時に、普遍的な解を求めすぎると個人の生きている身体が見えなくなってしまいます。
かといって個別的な感覚や考えに耳を傾けすぎても世間話のような気楽な楽しさしか残りません。普遍と個別の中間辺りで物事を見つめ語ろうとするその姿勢がとても大事だとワークショップ実践者として感じました。
私たちが行う視覚障害者とつくる美術鑑賞ワークショップでも見える人、見えない人、見えにくい人、様々な見方を持った人がかかわり合います。自分とは違う見方を持った誰かと関わるからこそ、距離を保ち、言葉と想像力を使って「見えているもの」と「見えていないもの」を見つめ直す、そんな実践を続けたいと改めて思った一冊でした。
視覚障害者の方は、この本の巻末に付いているテキストデータ引換券を出版社に送るとデータを提供してもらえるそうです。
また現在、図書館・音訳グループなどで点字データ化・テープ化・デイジー化中です。
★光文社「目の見えない人は世界をどう見ているのか」詳細ページ