国立科学博物館の常設展地球館にて鑑賞ツアー(2016.3)

2016年3月21日(月祝)に国立科学博物館(東京、台東区)の常設展地球館にて鑑賞ツアーを開催しました。三連休で賑わう館内を12名の参加者のみさんと一緒にめぐりました。 参加した皆さんは、見える人・見えない人ともに国立科学博物館に初めて訪れる方が多かったです。

地球館の3階では約400点の大型哺乳類剥製標本「ヨシモトコレクション」を鑑賞しました。曲線を描く展示ケースの中でこちらを見つめながら堂々と立つ動物たちの姿を見た参加者から『まるで違う惑星に降りたったよう」という感想もありました。

様々な種類の動物が一堂に会した展示を眺めながら、見えていることを言葉にしていくと、いろんな疑問が浮かび上がってきます。なぜ茶色の動物が多いのか、「かわいい」や「怖い」という感覚はどこからやってくるのか、生きた動物を見ることと剥製を見ることの違いは何かなどなど。私たちは、動物園にいる動物を見て「剥製だ」と思うことはありません(たとえその動物が動いていなかったとしても)。それは、呼吸による微細な皮膚の上下運動を読み取っているからではないか。そんな些細な動きやしぐさを読み取って、動物に対して「かわいい」と思ったり「怖い」と思ったりするのではないか。みんなで話した結果そんな仮説も生まれました。

地球館地下1階では、恐竜の全身骨格標本を鑑賞。かつて生きていた大きな生物と時間を経て出会うことの不思議をみんなで共有しました。ここでは、現代の生態系にはありえない「生物の大きさ」という実感を言葉にすることが難しいようでした。ビルやトラックなどの大きさに例えてみたりしましたがどれもしっくりきません。見えない 参加者の1人から出た「ビルの大きさや寸法にすれば頭では大きさを理解できるが、生き物感はわかない」という言葉が印象的でした。一つの空間に身を置いて見える人、見えない人、みんなで「実感」について考えてみることで、「知識として理解すること」と「実感すること」の違いが浮かびあった鑑賞ツアーとなりました。

撮影:中島佑輔