水戸芸術館 水戸芸セッションサポート(2013.12)
2013年12月1日、水戸芸術館で開催された、視覚に障害がある人との鑑賞ツアー「session!」にお手伝いとして参加しました。 県内外から来館した参加者35名が6チームに分かれイギリスの現代美術作家ダレン・アーモンドの個展「ダレン・アーモンド 追考」を鑑賞しました。
展示作品は400個以上の時計が目の前で時間を刻むインスタレーション『Tide』、京都比叡山の千日回峰行にのぞむ修行僧に伴走した映像『Sometimes Still』、夜明けの光だけで撮影した写真『Civil Dawn@Mt. Hiei』、9世紀から残る古代インドの遺跡「チャンド・バオリ」を題材にした『All Things Pass』、など。
ある参加者は中国の詩人の世界を想起し、ある参加者は古い日本画に描かれた世界を想起したようにどの作品も人間の歴史とともに太古から流れる時間を感じる作品でした。 このツアーでは作品の感想を語り合うだけではありません。 見える人、見えない人、聴こえる人、聴こえない人、様々な視点を持った人同士がお互いの見え方、聴こえ方、感じ方を確認しあいながらのツアーです。 ある参加者は「みえない人にうまく説明できませんでした…」という感想をもらしてましたが「そういう「伝えられなさ」にまじまじと対峙してみるのも良いのでは?それもまたコミュンケーションの始まり。」と水戸芸術館の森山さん。
そんな風に現代美術を前にしてやり取りされる全ての言葉や印象や感情も含めて、今を生きている私たちが何を見て何を感じているのか、ということを実感するツアーだったと思います。 まるで悠久の物語の様な展覧会を観た後はざっくばらんな茶話会も開かれました。全国各地から集まった参加同士、「どうしてこのツアーに参加したか」「この経験をどんな風に持ち帰りたいか」「展覧会の感想」「見えない人への質問」などなど、お話は尽きることなく続きました。
ツアー全体を通して、とてもリラックスした雰囲気が作られていたのは美術館職員の方、トーカーさんと呼ばれる鑑賞ボランティアの方々、フェイスさんと呼ばれる受付、監視の方々、ショップスタッフの方に至るまで、美術館の全ての人にいろんな来館者を歓迎しようという心意気にあふれていたからではないかと思います。長年ツアーを続けてきた水戸芸術館にしかない空気感を感じた一日でした。
主催:水戸芸術館